【文化祭編】文化祭当日 

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 旧校舎の3階の教室に行くと、百人一首かるたはまだちゃんとそこにあった。 「良かった」  私は大切に手に取ると、ほっと息を吐いた。このかるたは祖母の形見でもあるので、絶対に無くすわけにはいかない。  箱を抱えて教室を出る。  旧校舎の3階はほとんどが空き教室になっているが、端の部屋には写真部の部室が入っており、今日は写真展が開催されていた。「こちら写真部。写真展開催中」とのポスターが貼られた教室の中を覗き込んでみると、のどかな田園風景の写真や、モダンな高層ビルの写真などが掛かっている。 「わぁ~、綺麗だなぁ」  ゆっくり見てみたいと思ったが、もうすぐリハーサルが始まる。 (劇が終わったら小鳥遊君を誘って見に来ようかなぁ……)  老朽化でギシギシと音のする階段を下りながら、そういえばここ数日、お互いにクラスの出し物の準備で忙しくて、ろくに会話をしていなかったことに気が付いた。 (2組はお化け屋敷をするんだっけ。後で見に行ってみようかな)  オカルト的なことは苦手だが、学生の手作りのお化け屋敷ぐらいなら、平気かもしれない。 (そういえば、旧校舎って、幽霊が出るって噂があったっけ……)  不意にそんな噂話を思い出し、私は背筋が寒くなった。確か、階段から突き落とされて、死んだ女子生徒がいたとか、いないとか……。  思い出したら、急に怖くなって来た。特に、踊り場の鏡が怖い。その幽霊は、鏡から抜け出して、夜な夜な学校内をさ迷っているらしいのだ。  早く教室に戻ろう、そう思った時。 (――え?)  次の瞬間、私の視界がぐらりと揺れて――。  強烈な痛みと共に、私は階段の下に倒れ込んでいた。
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