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(side由希也)
お化け屋敷を出ると、俺はやれやれと息を吐いた。
「無茶苦茶、真殿を脅かしてやる」の言葉通り、杉本は真殿を驚かしまくった。そのせいで真殿が俺に抱き付いて来たので、
(理性を保つのが大変だった……。胸、腕に思い切り当たってたし。それに……可愛い顔するし)
おかげでこちらは動揺しっぱなしだった。教室が暗くて、俺の顔色が見えなかったのは、幸いだったと思う。
(後で、絶対杉本にからかわれるな)
そのことを思うと気が重い。
真殿は俺の隣で、
「怖かった……本当に怖かった……」
とぶつぶつ言いながら、上がった息を整えている。
そんな姿が面白くて、俺は小さく笑うと、
「さて、今度はどこに行こうか?」
と真殿を見下ろした。
「今度は心が癒されるところに行きたい!」
「じゃあ、天文部のプラネタリウムだな」
ふたり連れ立って、廊下を歩き出す。
教室の前を通るたび、
「メイドカフェやってまーす!寄って行って下さ~い!」
「コスプレ写真館やってます!そこのおふたり、一枚撮ってかない?」
色んな客引きが声を掛けてくる。
「ふふっ、文化祭楽しいね」
真殿がウキウキした様子で俺の顔を見上げてそう言った。
「そうだね」
(楽しいのは、真殿と一緒だからだ)
その言葉は心の中に留め、俺は彼女に微笑み返した。
真殿と一緒にいると、俺の世界は色鮮やかにキラキラと輝くんだ。
ふと窓の外を見上げると、そんな俺の気持ちを写すかのように、雲一つない青い空が広がっていた。
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