3章

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「初めてだったんだ、彼女が」  独り言風に呟くが、どうやら吾輩に聞いてほしいようだ。 「清夜(せいや)くん(澄乃ちゃんの弟)に付けられたこの名を、『今日の夜空とお揃いの綺麗な名前』と言ってくれたのは。俺の見える景色はそれから変わった。人生が、宙の星のように輝いた」  自己陶酔甚だしい台詞はともかく、恋の始まりが意外に真っ当である。ごめん。 「『10まんボルト出してみろ』って揶揄(からかわ)れて泣いていた俺を人生ごと変えてくれた。それだけ大事な存在なんだ」 「……そんな大事な存在を、困らせちゃいけないだろ」  光宙は背中を丸めたまま小さく頷いた。
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