3章

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 翌日、心配になって昼間空き地を覗いてみた。案の定光宙は土管の上で尻尾を垂らし、猫の癖に廃人みたいにぼんやり虚空を眺めている。吾輩の首輪に付いた鈴の音に気づいた光宙はゲッソリした顔で振り向いた。 「なんだ、ルートヴィッヒか」 「昨日飯食った?」 「いや、どうにも食欲がなかったからな」 「風邪? 家で寝とけよ」 「そうかもな……一生背負っていく、恋の病だ」  人間に恋してる時点で背負ってたんだが、気付くと本当に病に倒れてしまいそうだ。 「お前が飯食わなかったの見てさ、澄乃ちゃんなんか言ってた?」 「『どうしたの? どこか調子悪い?』って毛布を掛けてくれて、ずっと一緒に居てくれた」  コイツ本当に、相手の感情に疎い。吾輩は思わず笑ってしまう。 「愛されてるな、お前」
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