4章

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 唯ちゃんがシンク周りを綺麗にした頃、遅れてお腹を掻きながらリビングにやってきたのはお父さんだ。 「おはよー。お、これ俺の?」  どこぞのパパみたいな腹巻き付けてこにゃにゃちわしてるくせに図々しい。言っておくがバカではない。 「レイヤって書いてあるじゃないヨシヒコ」  バレンタインのことなどさっきまで忘れていた妻に真顔で言われたお父さんは少ししょんぼりしながら椅子を引く。 「お父さんそれ触らないで! 配置とかあるんだから!」  スマホを持つ娘に怒鳴られてまたひと回り小さくなったお父さんは、青い首輪を付けた兄さんを食器棚から降ろしながら呟いた。 「一護ぉ、ついに唯が女の子っぽいことし始めたよぉ」 「今唯ちゃんマジギレだったぞ」 「ルーちゃん一緒にお父さんの相手してくれ。お父さん髪の毛全部抜かれてしまう」  吾輩はいつになく必死でにゃんにゃん鳴いている兄さんに加勢するためお父さんのまだふさふさしている頭に覆い被さる。  そんなこんなで撮影会を終えた唯ちゃんが「あヤバ、授業間に合わん」とスマホをテーブルに置いて部屋に駆け戻る。鞄を持って降りて来たと思ったら捨て台詞。
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