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「あ、お父さん、お母さん。これ食べていいからね」
お父さんは食器棚から取ったマグカップを落とす。プラスチック製でよかった。
「レイヤくんにあげるんじゃないの?!」
「あげたよ。もう写真撮ったし」
お父さんは吾輩と兄さんをひっつけたまま唯ちゃんの後ろをついていき、玄関の鍵をしめてあげる。そしてリビングに戻ってからガトーショコラの前に座ると顔を覆った。
「嘘でもいいから現実の男に渡すって言って欲しかった……」
お母さんは目玉焼きをテーブルに置いたついでにいびつなガトーショコラをじっくり見ると、厳しい顔つきになる。
「いや、やめといた方がいい。よく見たらめっちゃ焦げてる」
「あいつ割と料理上手くなかった?!」
「受けが料理下手なのよ、察して」
「受けって何?」
どうか知らないままでいて欲しいので、吾輩は兄さんと一緒にお父さんの脚に尻尾を巻き付けて渾身の構ってアピールをした。
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