1章

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「で、今日は何の用事な訳?」  仕方なく聞いてやると光宙は「よくぞ聞いてくれた」と勿体ぶった口調で言う。こんなナルシストのお手本みたいな奴漫画でもそうそういない。 「ルートヴィッヒ。2月14日が何の日か知っているか?」 「煮干し(214)の日だ」 「馬鹿を言え。ヴァレンタイン・デーだ」    知ってるけどな。ちなみに煮干しの日というのは本当にあるんだぞ。 「俺の勝負の日だ」 「誰と戦うんだ」 「澄乃(すみの)ちゃんだ。俺は彼女の本命チョコレートが欲しい」  吾輩に澄乃ちゃんと直接の面識はないが、人形のように大きな目をした愛くるしい女子高生だった。 「貰える訳ねーだろ」  けっこうバッサリ切ったつもりなのだが、光宙は余裕の笑みを崩さない。 「はっ。これだから普通の男は。俺というイケメンの価値がわからんなんて」  そういう発言が自らの価値を下げているのだが気付く気配がないので、吾輩はこいつに現実を突きつける。
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