高城、夜の学校

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

高城、夜の学校

 小学校には必ず、七不思議がある。いわゆる、トイレの花子さんとか、夜中に段数が増える階段とか、勝手に動くピアノとか、旧校舎の霊とか、動く二宮金次郎とか。学校ごとに様々なものがある。私はそれらが好きで、しょっちゅう深夜の学校に忍び込み、生で見ようとするけれど、見たことは一度もない。 昨日、友人と話をしていると、『二階にある男子トイレの奥から二番目の個室を、夜中の二時に百回ノックするの。それで、百秒待って、ドアを開けると、近くの窓から、落とされるんだって』という、聞いたことがない怪談を聞いた。にわかには信じがたい。それでも、やってみようか。  ほとんどの怪談は、実際に試してみて、嘘だとわかった。しかし、『怪談男子トイレ』(今名付けた)は初耳だ。なので、試してみようと思う。  深夜二時になった。転校してから数ヶ月しかたってないが、校内への侵入口は見つけた。一時間前に学校までたどり着いたので、学校全体をくまなく歩き回った。まだ私が行ったことのない場所がたくさんあり、楽しかった。  やっぱり、音楽室のピアノは動いてなかったな、とか。松永先生の机の引き出しにぬいぐるみがあったなぁ、とか。わかってたけど、男子の体操着は臭いなぁ、とか。学校探検のことを振り返っていると、あっという間に百回叩き終わった。あとは百秒、のんびりと待つだけだ。  だけど、ただ待つのも退屈なので、声に出して時間を数えてみた。 「ろくじゅういーち、ろくじゅうにー…」ガタッ、と物音がした。これはもしかして…?私は負けじと大声を出した。 「ななじゅうさーん、ななじゅうしー…」別に怖いわけではない。 「きゅうじゅうはーち、きゅうじゅうきゅー…」大きく息を吸い込んで、 「ひゃく!」ひっ、と大声が、トイレの中から聞こえてきた。誰の声か、思い出せなかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!