神川、高城。夜の学校、そして

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神川、高城。夜の学校、そして

「あ、アニキ」 「やっぱりいたか。可愛い弟よ」 「アニキって、幽霊触れんのかよ?」 「肌の出てるところならな」 「じゃ、じゃあ、なんでここに来た?それに、美術室の幽霊、投げる必要、ないだろ?なんで?」 「…どっちの質問も答えよう。まず、流石に気づいていると思うが、あの幽霊は美術室のそれだ」 「それは分かってる」 「アイツと俺、話したことあるんだぜ」 「えぇぇ⁉︎」 「どうやったかは教えないぞ。それで、彼女が俺の初恋の相手だ。もちろん俺も只の男だ。愛しい弟の目の前でする愛の告白は恥ずかしいだろ?だから投げた」 「…なんだ、そんなことか」 「ちょっと待て。もう一つ、お前に伝えたいことがある」 「それは?」 「お前は高城って女子に告白する予定だったんだよな?」 「そうだけど」 「その子が幽霊な。美術室の」 「…」 「運動会のときにその転校生を見て、一目で分かったよ。苗字は何故か変わっていたけどな。そして、俺がここに来た理由は、お前に彼女を取られたくなかったから。ついでに言うと、彼女、俺の初恋相手だ。因みに、小二のときだ」  やっぱり、高城は、高嶺の花だった。そして、しばらくの間は、アニキに追いつけない。そう悟った。  投げ飛ばされた、『神川』のいる学校。そこから思いつくのは、神川しかいなかった。 確かに『神川』は神川の弟だ。目と眉毛がかなり一致している。  それに、一応ではあるが、『神川』とも面識はあった。美術室でチラチラ私を見ていたのを思い出した。あれは確実に、『見えている』目だった。  神川とは、一言では言えないような関係だ。  私のことが見える初めての人で、仲良くもなった。小学校4年生ぐらいまでは可愛く、それからは少しかっこよくなっていた。  人と話したのも久しぶりで、彼とはすぐ仲良くなった。美術室でしか会えなかったのは残念だった。きっと私がこんな身体じゃなかったら…そんなことはよく考えていた。  しかし、神川が中二ぐらいになった頃、深夜。急に除霊師がやってきた。私は必死に部屋を逃げ回り、なんとか助かった。  除霊師は1人だが、その周囲に数人人がいて、その中に、神川の父親らしき人がいた。目と口が一致した。  神川にとって私は、なんなんだろう。 「久しぶり、藤原」私の旧姓、生前の苗字だ。 「どうしたの神川」 「…付き合ってくれ」 「その前に一つ、確認させて」 「いいけど」 「なんで私の存在を消そうとしたの?」 「それは…その」 「やっぱり迷惑だと思ったの?」 「それはない!」 「…じゃあ?」 「俺の親父は幽霊が嫌いなんだ」 「それは本当だよ」『神川』が返事した。 「それで、俺から『幽霊のにおいがする』って言ってきて、そうした」 「本当?」 「もちろん」  これは後日談だが、アニキは『幽霊高城』に告白し、成功したらしい。また、彼女が地縛霊になった原因は、建設中の小学校で木材が頭に当たったからで、即死だったらしい。人らしき体で動けるようになっても、学校を離れれば離れるほど、古傷が痛むらしく、家に高城が来たことは今でもない。ついでに言うと、アニキが高城と付き合いだした日が、彼女の百歳の誕生日だった。  そして今、オレは中三になり、隣の席で、水口、久代、高城の三人が楽しく会話している。なお、小学校から中学校まで、数十メートルしか離れていないので、頭痛はあまり激しくないのだそうだ。
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