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「コガニン族の男子は、未婚のおなごに耳を見られたら掟によりその者とケッコンしなければならないのでござる」
「……バカなの?」
「ムコです」
立ち上がって、ヨーコが頭巾をバサーっと翻した。
「さて……と、早く次の町へ行かないと日が暮れちゃうわ」
「ですね。初夜が野宿ってのは拙者もちょっと」
「バカなの?」
「ムコですってば」
いそいそと頬かむりを被りなおし、さぶ太郎がヨーコの隣に並ぶ。
その足元に、ビシビシビシッ!とヨーコの鞭が振り下ろされた。
「冗談じゃないわよ! なんであたしが自分の命を狙ったヤツをお婿さんにしなきゃいけないの!」
「だからー、そういう掟だし」
「認めないわそんなの!」
『ワシは認めるぞい』
その声はヨーコの頭の上から降って来た。
「な……なんと!? アナタさまは……!」
『ワシはヨーコの父。チャン・モー・マンタイだ、ムコどの』
それは頭巾。最強ピグみん族のヨーコの父親は、皮をなめされ頭巾になってもしゃべくり倒す。
「おとさん! 何考えてんの、なんで認めちゃうのよ!」
「ヨーコ殿、待ってくだされ! ……あの、皮だけですよね? なんで生きてるっていうか……話せるんでしょう」
『ド根性だ』
ほおーっと、さぶ太郎はその答えに心底感心したのであった……。
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