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『ある日、一組の夫婦の前に突如一人の女の赤ん坊が現れた。見ると赤ん坊の前の空間が歪に揺らいでいて……しばらくするとその歪みも消えてしまった』
「え……」
『子のなかった夫婦はこれも何かの縁と、その手足が長くて毛もほとんど無い赤ん坊を自分たちの子として大事に育てた』
マンタイの目はどこか遠く、それでいて愛おしさに溢れていた。
「まさか……まさか、その赤ん坊とは」
『だからワシは、たとえ皮のずきんになろうともヨーコの傍で、この娘を守ってやらねばと……。ド根性はピグみん族の十八番だ』
ニカッと笑う最強種族……のずきんが、さぶ太郎にはとても大きく見える。ピグみん族とは、身体だけでなく心根も強靭で深い。
「……義父上! 拙者も強くなりまする。そしてヨーコさんを守……」
『あ、別にそれは期待してない。ヨーコは十分つぉい戦士に育てたし。ムコどのはイザって時に囮になってヤラレテくれる?』
「ええっ!? そういうポジションでムコ認可!?」
だが、さぶ太郎の決意はフニャけなかった。男一匹、大事な嫁のために奮起せんでなんとする!
『とにかく、ヨーコ本人に認めてもらわんことにはね。まあそのうちなんとかなるんじゃん?』
無責任な言葉を最後に、マンタイは小さな目をスッと閉じてしまった。
「え、父上って眠るんですか? 見張りとかは……」
こんな野宿で、無防備極まりない。
「……なるほど、拙者はこういう要員でもあるのか」
荒野の野営で一人ぽつーん。
さぶ太郎は膝としっぽを抱えて不寝番を務めたのであった……。
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