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──あくる日、遅い朝に出立となったのは、ひとえにヨーコがいくら起こしても起きなかったから。
「ヨーコさんって寝ぼすけさんなんですね。またひとつ新しいヨーコさん、はっけーん♪」
「サンって気やすいわね! 昨日までヨーコ殿だったくせに。てか、なんでまだついてくるのよニャンパラオオカミ!」
「ムコですからー」
不寝番だったくせに足取りが軽いのは、やる気が漲っているからだろうか。
「ふん、まあいいわ。もうすぐ目的地だし、そこで用を済ませたら置き去りにしてやる」
「は? 明確な目的地なんてあったんですか。ただ賞金稼ぎで各地をフラフラしてるだけかと」
「違うわよ。おばあちゃんに会いに行くの」
先を行くヨーコの後を、しゅぱぱぱとさぶ太郎が追いかけて隣に並ぶ。
「あたしたち、おとさんを料理して皮をずきんに仕立てちゃったおばあちゃんを探してるの」
「え、義父上ってヨーコさんに殺られたんじゃ。それで手配の報奨金も今の一億に跳ね上がったんですよね?」
ズビシ! とヨーコのチョップがさぶ太郎のケモ耳の間に打ち下ろされた。
「あたしがおとさんを食べちゃうわけないでしょ。おとさんはね、お昼寝してる間に、移動式の中華料理店のおばあちゃんに料理されちゃったの」
「……はいー?」
すると、ヨーコの頭の上から当のご本人も話に参加。
『いやぁ、あの時はビックラこいたなぁ! 起きたらキレイに皮までなめされてずきんにされちゃっててー、木に干されてたのだよ』
世界最強戦士モー・マンタイ。美味しくイタダかれて木に干される伝説。
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