第一話 ヨーコとさぶ太郎 ~その娘、ピグずきんチャン~

17/19
前へ
/83ページ
次へ
「ギャ、ギャ、チギャギャギャギャァァ!!」  靴など履かないチスイー族はなす術もなく、足と耳の痛みにマキビシの上に崩れ落ちてもんどりうつ。だがさぶ太郎も容赦などない。 「天誅ーー!」  腹に忍刀がまっすぐ討ち込まれ、地に磔にされたモリーは動かなくなった。 「……安心めされよ。急所は外したでござる」 「さぶたろ……やるじゃない……」 「ヨーコさん、後ろ!」  あっけにとられるヨーコの背後で、モリーの兄コーが翼を大きく広げている。 「……っ!」  振り返るや否や、コーの翼が羽ばたいて激しい突風が巻き起こった。それは砂塵を舞い上げ、辺りの枯草と共にヨーコのずきんさえも。 「しまった、おとさん!」  下からの強風で剥ぎ取られたプギずきんが空に舞う。取り出したヒズメ鞭も風に煽られ思うように操れない。 「チーッ! ずきんの事は調べたぞ、それさえなけりゃプギずきんチャンなどただの小娘だチーッ!」  コーが突風で身をよじるヨーコに飛びつき、ぬらぬら光る牙で首筋に噛みついた。 「ヨーコさぁぁん!」  このままではすぐに身体中の血を吸われてしまう。 (ダメだ! ヨーコさんはあのずきんがなかったら……!)  ちょっとした刃物でも血がほとばしる脆い身体。マンタイが、死んでも守ってきた愛娘ヨーコ。そして 「──拙者の嫁に触るなーー!」  だが駆け出したさぶ太郎の足に、さっき自分が撒いたマキビシが猛威をふるう! 「ぐぎゃああ!」  転がった勢いでズザザーー!っとヨーコの足元にスライディング。必死で頭上を見上げたさぶ太郎の目に飛び込んで来たのは。 (はっ……!?)
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加