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「ギャ、ギャ、チギャギャギャギャァァ!!」
靴など履かないチスイー族はなす術もなく、足と耳の痛みにマキビシの上に崩れ落ちてもんどりうつ。だがさぶ太郎も容赦などない。
「天誅ーー!」
腹に忍刀がまっすぐ討ち込まれ、地に磔にされたモリーは動かなくなった。
「……安心めされよ。急所は外したでござる」
「さぶたろ……やるじゃない……」
「ヨーコさん、後ろ!」
あっけにとられるヨーコの背後で、モリーの兄コーが翼を大きく広げている。
「……っ!」
振り返るや否や、コーの翼が羽ばたいて激しい突風が巻き起こった。それは砂塵を舞い上げ、辺りの枯草と共にヨーコのずきんさえも。
「しまった、おとさん!」
下からの強風で剥ぎ取られたプギずきんが空に舞う。取り出したヒズメ鞭も風に煽られ思うように操れない。
「チーッ! ずきんの事は調べたぞ、それさえなけりゃプギずきんチャンなどただの小娘だチーッ!」
コーが突風で身をよじるヨーコに飛びつき、ぬらぬら光る牙で首筋に噛みついた。
「ヨーコさぁぁん!」
このままではすぐに身体中の血を吸われてしまう。
(ダメだ! ヨーコさんはあのずきんがなかったら……!)
ちょっとした刃物でも血がほとばしる脆い身体。マンタイが、死んでも守ってきた愛娘ヨーコ。そして
「──拙者の嫁に触るなーー!」
だが駆け出したさぶ太郎の足に、さっき自分が撒いたマキビシが猛威をふるう!
「ぐぎゃああ!」
転がった勢いでズザザーー!っとヨーコの足元にスライディング。必死で頭上を見上げたさぶ太郎の目に飛び込んで来たのは。
(はっ……!?)
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