33人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「ヨーコさん、また拙者のナマ耳見たぁー!!」
「今さらなによ! アンタだってあたしのナマしっぽ見たくせにーー!!」
『オマエたち……父の前でそんなイチャコラ、ハレンチな』
「イチャコラじゃないわよおとさん! キッチリ諍ってんの、見りゃわかるでしょ!」
「破廉恥じゃないでござる。なぜなら拙者らはムコとヨメ!」
「まだ言うかおのれはーー!!」
スパパパパン! と往復ビンタを食らって、さぶ太郎のほっぺは満身創痍。
「う……、ひどいー! ヨーコさんなんて寝たら最後、なかなか起きないくせに!」
「はあっ!? それが何よ、なんか文句ある!?」
「あとあと、最近1㎏太ったくせに! 毎朝、寝てるヨーコさんをコッショリ持ち上げてるけど絶対1㎏増! 拙者にはわかるぅー!」
「なっ……ヒトが寝てる間にそんなコトをーー!?」
「わああああ! ヨーコさんなんかヨーコさんなんか、もう知らないでござるうぅぅぅ……!」
涙の雫を散らし、さぶ太郎はシュタタタ……と目にも止まらぬ早業で夜の闇に消えていってしまった。
『ムコどの、また家出か……かわいそに』
「非難がましい言い方やめて。あたし悪くないもん!」
フンッと鼻息も荒く、ヨーコは大の字に横たわって目を閉じてしまった。すると瞬く間にスースーと寝息が聞こえだす。
『ふむ……戦士たる者、早寝早メシ早ンコと教育したのは父であるこのワシだが。……やはりお前は最強じゃ、ヨーコ……』
さぶ太郎不在により、途端に静かになってしまったヨーコたちのパーティー。
荒野の中にポツンと灯る焚火が、宵闇の中でゆらゆら揺れながら静寂の時を数えていった…… のだが。
最初のコメントを投稿しよう!