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──一方こちらは、荒野で峰を連ねるハゲ山の一角。
「ヨーコさんの……、ぱかぱかお馬さん……」
何を言っているのか、さぶ太郎自身もわからない。
悪態をつきたいのに、ストレートに馬鹿とは言えなくて、悪口に寄せた言葉を探しているのかもしれない。
膝を抱え、まんじりともせずに数時間。彼の心の傷は一向に癒されないままだった。
(あんな思いっきりチョップしなくたって……ムコなのに)
女心の難しさを痛感し、本日何度目かのため息がぷぅと出る。
(修行ばっかしてたからなぁ……レンアイ関係は勉強不足が否めない)
さぶ太郎が手持ち無沙汰にクナイを取り上げると、柄に青い光が灯っているのに気が付いた。
(ああ……そっか。SNSにコメントが入ってるのでござるな)
気晴らしにとSNSの画面をホログラムに乗せてみる。浮かび上がったマイページを眺めると、案の定フォロワーからの新規コメントがあった。
【月見団子が食べたい:しぶ太郎さん、こんばんは。 今ぼくは月を見上げています。なんだか美味そうだww しぶ太郎さん、レパートリーに団子があったら今度レシピよろです @鬼武者ケムマキさんより】
(あ、この前おヨメどのと仲直りしたケムさんだ。彼も今、月を見ているのでござるか……)
さぶ太郎はホログラムにピピッと文字入力のツールをセットした。
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