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(ずっと……一緒に。いてもいいのでござろうか……)
見上げたまぁるい月が、ヨーコの笑顔に見える。しっぽのついたおちりに見える。
「…………ヨーコさあぁぁぁん!! ゥオオーーーーン……!」
ウルフゥ族の血が騒ぐ。別に変身なんかしないけど、身体の中の何かが冴え渡る。
その時だった。
「──ぐっ!?」
さぶ太郎の背中に、ジャッと伸びた鋭い爪が突き刺さった。それは彼の身体を貫通して、鋭利な爪先が腹から飛び出る。
「……なんだよこのチビ、報奨金8トンガって。あのプギずきんの婿だって噂だから、そこそこ金額も張ると思ってたのによぉ」
暗闇に溶けていたその者の姿がジワリと滲むように現れる。
声もなく前のめりに倒れたさぶ太郎を、突き刺した爪ごと高々と夜空に掲げた。
「まあいい。こいつの死体をプギずきんの所に届ければ、多少は隙も出来るはず……、あ?」
謎の男が月に重ねたさぶ太郎の死体を見上げて言葉を切った。
「な、なんだコレ、ただのぬいぐるみ!?」
男が突き刺しているのは、黒い布が巻かれたフカフカなニャンパラ形。
「一体どうなって……ガッ!?」
「……変わり身の術でござるよ」
今度は逆に、男の背中にさぶ太郎の忍刀が深々と突き刺さっていた。それは男の腹を貫通して長く伸びる。
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