第三話 さよなら、ブルートパーズ ~もうムコは要らない~

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『いやムコどの。いくらなんでも千里眼じゃあるまいし』  父のマンタイがヨーコの頭の上から指摘した。 「さすが義父上(ちちうえ)。ホントはアチコチにお尋ね者が伸びてました。それを辿って来たでござるー」 『童話にあったなぁ。千切ったパンを落としていくって』 「べ、別に道しるべに置いてきたんじゃないわ! 回収する官憲がトロ臭いのよ!」  ぷいっと横を向いてヨーコが口を尖らせる。  許婚者(いいなずけ)ではあるものの、ヨーコはまださぶ太郎の嫁になる事を良しとしない。 「でも買い物先でイイモノ見つけたでござる。見て見て、にゅーーん!」  おかしなオノマトペでさぶ太郎が広げたのは。 『おお! これはムコどのの手配書ではないか。初めて見たぞぃ』  カメラ目線で巻物を広げるさぶ太郎のドアップ。それは《ウォンテッド・生け捕りに限る・報奨金8トンガ》……と記された政府発行の手配書だった。 「前に『写真撮らせて』って見知らぬ御仁に頼まれたでござるが、まさか手配書用とは。隠れ蓑の術でコッショリ掲示板から剥がして来ちゃったー」
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