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「し、失礼しますレロ! どうされましたか!? この騒ぎはいったい……!」
駆け寄って来たのはこの宿屋の主人、カメレオン族のレオン。大きな目玉とクルッと巻いた長い舌が愛嬌のある小柄な男だ。
「ウェイターが持ってきたスープに毒が混入されてたのよ。アンタの指示ね……?」
振り向いたヨーコからユラユラと黒い陽炎が立つ。
「レロッ!? めめめ滅相もない! そ、それにウチの従業員は女子だけで、ウェイターなんて雇ってないレロ!」
「なんですって!?」
『落ち着けヨーコ。確かにこの店に入ってきた時、店員は全員ウェイトレスだった。……迂闊だったな』
他の客がザワザワと遠巻きに輪を作り始めても、まだヨーコは現実を受け入れられない。
「じゃあ誰が……誰がこんな事をぉぉぉお!!」
『忘れたか、ワシらは殺るか殺られるかの世界に身を置く者。死はただの負け、犯人探しなど恥の上塗りじゃ』
「……!」
父、マンタイの言う事はもっとも。それはヨーコの身体にも心にも染みついている。けれど……!
『ヨーコ、ムコどのを部屋へ。官憲にはワシから連絡して、亡骸の回収は不要と伝えておく』
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