第三話 さよなら、ブルートパーズ ~もうムコは要らない~

10/17

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「おとさん……」 『明日この町を出て、どこか美しい場所に埋葬してやろう。祝言こそまだであったが……お前のムコどのだ』  マンタイの気遣いに押され、ヨーコはさぶ太郎を抱えて部屋に戻った。     いつもなら当然ヨーコが使うはずのベッドに、忍び装束の小さな亡骸を横たえる。 「だから嫌だったのよ……」  ぽつり、ヨーコのつぶやきがさぶ太郎に落ちた。 「あたしは1億tの賞金首。一緒にいれば否応なくあんたにも危険が及ぶわ。ちょっと変な術が使えたって、いつかはこうなると……」  ヨーコはさぶ太郎の頬かむりに手を伸ばし、静かに脱がせた。  現れたのはピョコッと可愛い、コガニン族の大事な秘所(・・)、三角ケモ耳。 「ふふ……。あたしも時々、寝てるあんたの耳をこっそり堪能してたの。文句なんか言わせないわよ、なぜならあたしは」  ふわふわの耳をニギニギ。それは得も言われぬ癒しの感触。 「さぶたろのヨメだから……。でも」  もう片方の手で、ヨーコは胸元のペンダントを引き出して彼に差し向けた。  これは手配者の名前や報奨金額などの様々なデータが検索できる、Skywan(スカイウォン)という機器。  宙に浮かび上がったホログラムが映し出したさぶ太郎の情報は。 「ほら、ちょうど消えてく。”チャン=ヨーコの婿”って記述が……」  見る間に霞み消えていくその文字。マンタイから連絡がいき、政府が処理したのだろう。 「あたしたち、……もうムコとヨメじゃない」  おそらくヨーコのプロフィールからも”さぶ太郎の嫁”という追記は削除されている。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加