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再会の時間
猫はアフターケアを忘れない。
やあ、人間。ペットの飼い主として、様子を見に来てやったぞ。以前のようにブラッシング奉仕をさせてやるわけにもいかんが、こうやってお前たちの脇に来ている。
お前たちが大切なご主人さまである我々のことを思い出す時、我々はいつでもお前たちのそばにいるのだ。
猫の記憶力は悪いと、ばかなことを唱えるやからもいるようだが、そんなことはない。なにせ、御先祖様の時代から、狩りする獲物のことや天敵のことをおぼえていなければサバイバルできなかったからな。
それは今もしっかりと我々に受け継がれている。なにより、お前たち人間をペットにするためにいろいろと観察してきたからわかるであろう。我々の記憶力はものすごいのだよ。
たとえば、あのドアとかいうやっかいなものも、扉とかいう思い壁も、開け方のコツはお前たちをじっくりと観察しているからよくわかっている。
また、お前たちの食事の支度が遅い時も、不本意ではあるが自分たちで食べるものを準備せねばならず、あの棚とかいう場所の扉を開ければ、そこには食べ物があることは承知している。腹が減ればそれを食べるしかないであろう。
そうやって過ごした日々を、お前たちがありがたく感謝して思い出す時、我々はいつもお前たちのそばにいるし、使えなかったやつだと思いつつ寛大な心でそれを許容しているのだ。
お前たち人間が、日々の生活の中でドアを開けるとき、扉を締める時、棚の扉を開ける時、ふとしたことで我々に仕えたことをありがたく感謝して思い出すがよい。
人間よ、お前たちが我々のことを忘れないかぎり、いつでもそばにいるし、ずっと見守っていてやろうではないか。
それがペットの飼い主としての努めだからな。
虹の橋があるかどうかは知らぬが、お前たちが死んだら、また会おうではないか。
(おしまい)
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