イルカ座の少年

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 翌日、自宅で起きると時間はすでに昼を過ぎていた。  寝ぼけ眼をこすりながら服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。  暖かい湯気の中で目を瞑ると、徐々に昨日の景色と興奮が蘇る。  尻にハメている漏斗も、漏れ出る空気の「シュー」という音にもすっかり慣れてしまったが、その二つがしっかり存在する事で昨日出来事が夢じゃ無い事が実感された。  やってやった。やってやったんだ。  心の中でそう呟きながら無言でガッツポーズを決めていると、久しぶりに便意が到来した。  断食以降、初の便意だ。  そのままシャワーを止め尻の漏斗を外し、すぐ隣にあるトイレの便器にまたがった。 「ブーーーーー」  漏斗を外した途端、勢いよく部屋中に例の音が鳴り響く。  また騒音の苦情をもらってしまったら敵わないと、一気に力んで早期決着をさせようとした次の瞬間。  ピタッと音が止んだ。  ウンチが肛門をピタッ塞いだのだ。  昨日、飯塚が食べに食べまくった焼肉は、断食明けカラカラの大腸に栄養を極限まで吸い取られ、カチンコチンに大きく固まってしまっていた。  俗に言う、フン詰まりである。  音は止んだが、溢れ出していた空気が行き場を失いお腹の中を圧迫する。  みるみる膨らむ腹部は徐々に痛みを伴い始め、飯塚は焦りながら手で肛門部分をまさぐるが、一向にウンチの先っちょも掴めない。  妊娠線の様に縦シマが入り始めるお腹は、まるで冴えない風船コントの様に膨れ上がり続け、肛門をガリガリと爪で引っ掻くのも虚しく、電子レンジに入れた卵のように「ボンッ」と破裂した。  上半身だけになった飯塚は、崩れ落ちながら自分の血しぶきの中に宇宙を見つけた。  その宇宙は、膨張を続け、ドンドン大きくなっていく。  自分の太ももに膝枕をされながら、なおも広がり続ける宇宙に、飯塚は見つけた。  ——そうだ、ベガだ。  そう呟くと、イルカ座の少年は膨張し続ける宇宙に飲まれて消えた。
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