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自分を守る為に、世界を壊した。
新太くんを『お兄ちゃん』に、お兄ちゃんを『元彼氏』として接するようになったんだ。
ちゃんと2人が離れていかないように、嘘の世界を作った。
彼氏を『お兄ちゃん』と呼び、お兄ちゃんを『彼氏』とした記憶の操作。
傷を守るための、最高の決断だった。
彼氏をお兄ちゃんとする事で、彼氏は離れていかない存在になる。
お兄ちゃんを彼氏とする事で、兄である以上離れていかない。
離れていかない為に、自分の記憶全てを犠牲にして守った関係だった。
「僕は確かに妹が大切だ。たった1人、ずっと守っていく家族だからな」
恋愛感情ではない。そんな安っぽい感情に流されない、揺るがない絆。
「――だから、その絆に嫉妬してんだよっ」
「お兄ちゃん達、帰ったかと思ってたのよ」
いつの間にかベットに眠っていた私は、再び喧嘩を始めてしまいそうな二人の声に目を覚ました。
「良かった、仲良しなのね」
「これのどこが仲がいいんだ」
「無関心が一番傷つくんだもん」
知ってるよ。無関心の痛みを私は知ってる。
「私を守ろうとしてくれてありがとう。大好き」
だからどうか、喧嘩はしないでほしい。
二度と喧嘩はしないでほしかった。
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