13人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
エラー・エラー・エラー
肌に夜の冷たい空気が突き刺さった。
「俺たち別れた方がいいと思うんだ」
心に貴方の言葉が突き刺さった。
薄暗い電燈の下、彼の吐く息は白く夜空に吸い込まれていく。海は真っ暗で、電燈の下、私の影が縋るように彼の方へ長く伸びている。
どこまで彼と一緒に居たのか、どんな話し合いをしたのかなんて、全部覚えていない。
ただただ悔しさだけはあとからあとから湧き上がって涙として流れていた。
私はこの海の見える公園が好きだったの。夜景が海に映ると世界中が楽しそうに、幸せそうに息をしているように見えた。
私、この海が見える公園で貴方とデートするのが好きだったの。
お金がない高校生の私には、公園で色んな犬を眺めたり、話したり、東屋でノート広げて勉強できるから、居心地が良かったの。
だから、こんな悲しい気持ちで染めないで。
「嫌だよ。なんでそんな悲しい顔で言うの」
ぼんやりと顔が見えなくて、震える声で私は聞いた。
なんでそんなに顔が見えないの。どんな顔をしているのか分からない。見えないよ。
頭の中で壊れないように大事に大事に抱きしめていた心が、粉々に壊れていく音がする。
粉々になった心が私の手足を切り刻んでいく。血は流れない。代わりに沢山の涙と叫びが口から零れ落ちたの。
「愛梨っ」
叫ぶ声が、する。
あれ? 私は今、どこにいるの?
気づけば公園から飛び出してふらふら、今にも道路に倒れ込みそう。
伸びる手、スローモーションで倒れていく私。
「愛梨っ」
もう一度私をその声は呼んだ。その名前が私だと気づく前に、私はアスファルトの地面に叩きつけられた。
一度目のエラー。心がエラー。
最初のコメントを投稿しよう!