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「まどか」
久しぶりに聞く大好きな声に顔を上げる。
顔を見るのも久しぶりだ。
こんなに男っぽかったっけ。こんなに背が高かったっけ。
こんなに…大事そうに名前を呼んでくれてたっけ。
卒業式にも流れなかった涙が名前を呼ばれただけで溢れて落ちた。
「宏ちゃん……」
思わず伸ばした手を宏太が掴み引き寄せられた。
まどかの泣き顔を隠すように腕の中に閉じ込め、背中を大きな手のひらがゆっくりと撫でた。
「連絡まともにできんでごめん」
「うん…」
「風邪ひかんかったか」
「うん…」
「家の手伝いしよんか」
「うん…」
「まどか」
「うん…?」
背中を撫でていた手が止まり、強く強く抱き締められた。
「会いたくてたまらんかった…」
「うん…!」
初めて聞く宏太の涙声に止まりかけていたまどかの涙がまた溢れた。
お互いの体温や匂いを忘れないように2人は言葉も交わさず長い間ただ抱き締め合っていた……
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