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並んで座り宏太の背中に回した手を指を絡めて繋いだ。
バスが止まりドアが開くたびに乗りますか?と聞かれる運転手からの問いに2人は首を振る。
寒い中照れながら肩や手をくっつけあっていたのがもう随分前のことのような気がする。
今は日差しも柔らかく風も暖かい。
宏太の新しい生活を応援したい、向こうでも頑張ってね、そう言って笑って別れたい。
そう思うのに、そう思ってきたのにどうしても言葉が出てこない。
宏太の乗るバスがバス乗り場に止まり、運転手が出てきて乗りますかと尋ねる。
はいと返事をした宏太にまどかの身体がびくっと震えた。
「10分後に出発します」
そう声をかけて運転手は停留所の中に入って行った。
ぱらぱらと乗客がバスに乗り込んでいく。
繋いでいた手が背中から出され、宏太の親指がまどかの手をそっと撫でた。
「………うん以外ゆうなよ」
「え………」
まどかの心臓がどくんと音をたてた。
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