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真実
ベランダで煙草の煙を吐き出しながら空を見上げる。空には、天の川が薄く輝きを放っている。
八年待って、やっと朔を手に入れた。
八年前の夏、何人かと軽い付き合いをしていた俺は、その中の一人の男と遊びに出かけた帰りに、気まぐれで車を道路脇に止めて山の中に入り、野外セックスを楽しんでいた。その時に、一人の少年に会った。少年と目が合った俺は、雷に打たれたかのように身体中が痺れた。それになぜか、俺には少年が白く輝いて見えた。
少年が慌てて走り去った直後に男とのセックスをやめて、そこで二度と会わないと告げた。他の遊び相手とも縁を切った。
俺は、少年がどこの誰かをすぐに調べて見つけた。でも、さすがに俺が特異な性癖を持ってるとしても、未成年には手出しできない。だから、少年が成人するまで待った。
そして、少年が二十歳になった翌月、いよいよ声をかけようとしたその時、電車で痴漢が少年…朔の尻を触っているところを見てしまった。
俺はムカついて、痴漢の腕をかなり強く握ってやった。本当はぶん殴ってやりたかったが、朔を怯えさせるわけにはいかない。俺は何とか怒りを押さえて、近くにいた駅員に痴漢を引き渡した。まあ、結局は痴漢に逃げられてしまったけど…。だけど、幸運なことに朔とまた会う約束ができた。会って身近で接して、俺は追い求め続けた朔に、ますます惹かれていった。
焦らずゆっくりと関係を深めていこうと決めていたのに、朔の身体に触れた瞬間、思わず自分の気持ちを吐き出していた。『ああ…失敗した。もう会ってくれないかもしれない』と落ち込んだが、朔も俺のことが気になってると言ってくれた。俺はとても嬉しかった。朔の気持ちが知れただけで満足だったのに、更にキスをして、感動で震えた。
そして今夜、遂に朔と一つになれた。生まれて初めて、この世に生を受けたことを感謝した。
朔は、髪も顔も手も足も肌も、すべてが綺麗だ。
朔は新月。周りには姿が見えなくても、朔の引力に引き寄せられた俺には、初めて目にした時からずっと輝いて見える。朔が月なら、俺は朔の周りを巡る星だ。
短くなった煙草を携帯灰皿に入れて、後ろを振り向く。窓ガラスの向こう側でスヤスヤと眠る朔を見て、俺の顔が綻んだ。綺麗に拭いた裸体に、タオルケットをお腹に乗せただけの朔の姿は、やはり白く輝いて見える。
俺の綺麗な朔。これからもずっと、愛してるよーー。
心の中でそう誓って、もう一度、空に輝く天の川を眺めた。
完。
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