➂ 私の嫌いな……。 黒井side.

1/2
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

➂ 私の嫌いな……。 黒井side.

 私は何も間違っていない。  誰よりも早く出勤して、仕事中はいつも周囲のことを気にかけている。みんなに感謝されると嬉しいし、また頑張ろう、何か役に立つことはないだろうかと考える。職場は私にとって、自分を証明できる大切な場所なのだ。  そんな社内で唯一、一生懸命頑張っても、あからさまに嫌悪感を出す赤川さんの存在は重要だった。最初は、私の親切を迷惑そうにしてイラっとしたが、  私の頑張りを否定する人がいるだけで、私の存在価値がまた上がると気がついた。  周囲が頑張っている私に同情の目を向け『黒井さんは一生懸命やっているのに、あんな態度を取らなくても……』と赤川さんに非難の目を向ける。私が全く気にならないという風に振舞えば、周囲はまた私を尊敬のまなざしで見る。  赤川さんにはこれからもずっと、私を疎ましく思っていて欲しいと思う。  そんな私でも許せないものがある。  あれは昨年の事。友人に誘われて、仕方なく行った映画館。友人には『楽しみだよ。誘ってくれてありがとう』と言ったが、原作が漫画の映画になんて興味がなかった。  仕方なく映画を見て、私は愕然とした。作中、ヒロインと呼ばれる『彼女』の存在に。イライラした。  彼女の存在が悪だった。話をつまらなくしている。原作者はそれに気がつかないだけ。世の中に教えてあげなきゃいけない。あの女がいなければ、話はもっと面白くなる。  私は毎夜、彼女が登場する話を作っている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!