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赤川さんは誰とも群れない一匹狼タイプだ。長い黒髪で切れ長の目。少し近寄りがたい雰囲気がある。
赤川さんは黒井さんのことが嫌いなんだと思う。二人とも仕事はできるが、性格は正反対。そしておそらく、タバコを吸っているのは赤川さんだ。
「ああいう態度。どう思う? 信じられないよね」
「あの人がタバコ吸っているんでしょ」
「感じ悪いよね、黒井さんが色々やってくれているのに」
背後からひそひそと声が聞こえた。黒井さんと仲のいい女子社員たちは、赤川さんに冷ややかな視線を送っていた。彼女達のお喋りはなかなか終わらない。
「そんなこと言っちゃだめだよ。考え方は、人それぞれだしさ」
課長に一通り話し終えた黒井さんが席に戻って、宥めるように彼女たちに声をかけた。
「黒井さんって人が良すぎ。赤川さんがタバコ吸っているって、課長に言えばいいのに」
「でもね、赤川さんは仕事ができるよ。彼女がいないと、この会社は回らない。私、ちょっと意見を言い過ぎたかな。みんなも嫌な気持ちになったよね。ごめんね」
申し訳なさそうに手を合わせる黒井さんは、まるで仏像のようだった。
「そんなことないって。黒井さんはほんと、みんなの事ばかり考えすぎ」
「黒井さんこそが会社に必要な人材だよ。みんな助かっているんだから」
同僚たちの力強い言葉を、黒井さんは菩薩のような笑みで返していた。
みんなに笑いかける黒井さんを、赤川さんは冷ややかな目で睨んでいた。
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