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determination
俺は書面を見るなり絶句した。
姉さんがこんな如何にも怪しい内容の文面に同意したという事実が信じられない。
否、悪魔に脅されて無理やりという可能性も捨てきれない。
そうであってくれとペンを握りしめているとそっと悪魔が手を添えてくる。
「ふふふ、姉さんは騙されていたのだという顔をしていますねぇ。
公言して起きますが私、悪魔どもは契約に関しての嘘はつけません。
契約が命取りなので。」
俺の心を読むかの様に悪魔は囁く。
さぁ、契約を。
さぁ、サインをと歌う様に仕向ける。
その手には乗らないと契約の書面をもう一度見る。
何か穴はないのか?
重大なことを見落としていないか?
ふと、いかなる場合にもという言葉が引っかかり、悪魔に問いかける。
「おい、悪魔。
このいかなる場合の病気や怪我、毒殺、死亡って矛盾していないか?」
負けたら姉さんの様に体が人形になるなら外的要因の保証は必要ないはずだと盲点をついたと思ったが悪魔はやや呆れた声で説明した。
「あのですねぇ、坊ちゃん。
あなたは信用しないと思いますがドール達の使う技によっては術者に害を及ぼすものがあるのですよ。」
やれやれ、魔術に精通してない凡人は困りますねぇと悪態を吐く悪魔。
非科学的なものは信じたくないが目の前に悪魔と名乗る奴や奴の鉤爪や鳥頭を見せられちゃどうにも否定できない。
ごくんと生唾を飲み込む。
俺は長男の癖に姉の背に庇われてきた弱虫だ。
だが、もう違う。
自分の意思で医者を志し、姉の死の真相を知ると決めたんだ。
悪魔でも魔王でも騙されたっていい。
真実を知るためなら乗ってやる。
熱い決意を胸にペンを取りサインを羊皮紙に書く。
それを突きつけて高らかに宣言する。
「やってやるさ。
契約でも戦いでも何でもな!」
俺の宣言に悪魔は邪悪な笑みを浮かべて羊皮紙を丸めた。
「ええ、ええ、確かに頂きました。
それでは、契約の儀に移りましょう。
坊ちゃん、そのお姉様の亡骸をお持ちになってこちらへ。」
悪魔が恭しく奥の間へと案内する。
その背に俺は嫌味を返すように言う。
「坊ちゃんじゃない。
俺の名はロバートだ。」
悪魔は振り返らず答えた。
こちらの神経を逆なでするように。
「これは、これは大変失礼いたしました。
ロバート様。」
悪魔の態度が気にくわないがもう付け込まれるのはごめんだと強気な態度で足を進める。
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