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1 羽化
ある日の夜
それは私の中から、突然に現れた。
まるで蝶が蛹から羽化するように、仰向けに寝ていた私の体の中心から、割って出てきた。
「な、な、な……なんなの?!なんで私の中から人が!!」
驚き、動揺する私の事など気にせずに、私の中から出てきた女は、顔にまとわりつく髪を振り払い、ベッドの横へと降り立った。
「ちょっと、なんなのあなたっ!」
私の声に振り向いた女は、何も言わず、ただその整った顔に
ニィッ
と、不気味で妖艶な笑みを浮かべて、窓辺に移動すると、そこに手を掛けて、窓から外へと飛び降りた。
うそ!ここ7階!
ベッドから飛び降りて、窓辺に駆け寄って、窓の外を見れば、走り去っていく女の姿が小さくなっていくのが見えた。
あれは何?
私の中から出てきたって事は、もしかして、あれは私の一部だったりするの?
もしそうだとしたら、きっとあれは、私が今の私でいる為に、押さえ込んでいるもの…ストレスとかが具現化したものかも…
「でも、それだと…」
あれはあまりにも、私に似ても似つかないほど、綺麗な女の人だった。
「って、私ってばなに真面目に考えてるのよ!これは夢よ!夢に決まってる!」
もう一度寝て、それで朝目覚めたら、変な夢見ちゃったって言っておしまい!
私はそう言い聞かせて、頭まですっぽり布団を被って、あまり眠くなかったけど無理やり眠った。
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