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朝目覚めると、いつも通りの朝で、私は
昨日のあれはやっぱり夢だった
そう思って、学校へと向かった。
「おはよう」
教室の扉を開けて、いつものように作った笑顔で中に入ると、昨日私の体から出てきた女が、今までなかった席に座っていた。
「え?なんで…」
私が驚き立ち尽くしていると、親友の琴音が近づいてきて
「どうしたの?顔色悪いよ?何かあった?」
そう声を掛けてきた。
「何って、あの席は何?それにあの女は誰?」
「やだ何言ってるの。同じクラスの揚羽ちゃんじゃない。あの女って酷いよ〜」
琴音は「その冗談笑えないよ〜」と言いながら、私が熱でもあるんじゃないかと、額に手を当てたりしてきた。
揚羽ちゃん?
クラスメイト?
嘘だ、だって昨日まであんな子居なかった。
でも、皆は居たものとして普通に接している。なんなの?何が起こっているの?
「委員長は、揚羽が自分よりも勉強が出来て、落ち着いてて、なにより美人だから、僻んでいるんだろ?いっつも、揚羽に突っかかるもんな」
このクラスのお調子者、雄大は揚羽と呼ばれる子の向かいの席の机に腰掛け、私に向かって大声でそんな事を言った。そして、それを聞いた皆はクスクスと笑い出した。
これはなに…?
私はこれまで、周りに嫌われないように、本当は明るくも活発でもないし、むしろそんなのは苦手だったけど、そう演じて、昨日まで上手くいっていたじゃない。
皆、私を「委員長」って呼んで、頼りにしてくれて、バカな事言ったりして、楽しくやっていたじゃない。
なんで急にこんな嫌な雰囲気に変わってしまったの?
「ち、違うわよ!やだ、私は今日、寝不足で頭が回ってないから、ちょっとボケただけよ。雄大こそ、変な事言わないでよ」
私は引きつった笑顔を見せて、あたふたと自分の席に座った。そんな私にとても嫌な視線が、幾つも突き刺さった。
こんな訳も分からず、一瞬にして、私の今までの努力や苦労が水の泡になるなんて…
昨日までの私が否定されて、私の存在も居場所も崩されてしまうなんて。
いや、でも、これも夢かもしれない
目覚めたら元通りになっているかもしれない。
そう思ったけど、この悪夢は翌日も、その後も、覚めることはなかったのだった。
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