1 羽化

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朝目覚めると、いつも通りの朝で、私は 昨日のあれはやっぱり夢だった そう思って、学校へと向かった。 「おはよう」 教室の扉を開けて、いつものように作った笑顔で中に入ると、昨日私の体から出てきた女が、今までなかった席に座っていた。 「え?なんで…」 私が驚き立ち尽くしていると、親友の琴音が近づいてきて 「どうしたの?顔色悪いよ?何かあった?」 そう声を掛けてきた。 「何って、あの席は何?それにあの女は誰?」 「やだ何言ってるの。同じクラスの揚羽ちゃんじゃない。あの女って酷いよ〜」 琴音は「その冗談笑えないよ〜」と言いながら、私が熱でもあるんじゃないかと、額に手を当てたりしてきた。 揚羽ちゃん? クラスメイト? 嘘だ、だって昨日まであんな子居なかった。 でも、皆は居たものとして普通に接している。なんなの?何が起こっているの? 「委員長は、揚羽が自分よりも勉強が出来て、落ち着いてて、なにより美人だから、僻んでいるんだろ?いっつも、揚羽に突っかかるもんな」 このクラスのお調子者、雄大は揚羽と呼ばれる子の向かいの席の机に腰掛け、私に向かって大声でそんな事を言った。そして、それを聞いた皆はクスクスと笑い出した。 これはなに…? 私はこれまで、周りに嫌われないように、本当は明るくも活発でもないし、むしろそんなのは苦手だったけど、そう演じて、昨日まで上手くいっていたじゃない。 皆、私を「委員長」って呼んで、頼りにしてくれて、バカな事言ったりして、楽しくやっていたじゃない。 なんで急にこんな嫌な雰囲気に変わってしまったの? 「ち、違うわよ!やだ、私は今日、寝不足で頭が回ってないから、ちょっとボケただけよ。雄大こそ、変な事言わないでよ」 私は引きつった笑顔を見せて、あたふたと自分の席に座った。そんな私にとても嫌な視線が、幾つも突き刺さった。 こんな訳も分からず、一瞬にして、私の今までの努力や苦労が水の泡になるなんて… 昨日までの私が否定されて、私の存在も居場所も崩されてしまうなんて。 いや、でも、これも夢かもしれない 目覚めたら元通りになっているかもしれない。 そう思ったけど、この悪夢は翌日も、その後も、覚めることはなかったのだった。
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