1 羽化

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私はベッドに座り、大きなため息をついた。 私にはこの小さな自分の部屋しか、心休まる場所がなかった。 私は再びため息をつき、頭を抱えて項垂れた。 今まで、私が私を押さえ込んで、自分で嫌だと思う部分も出さないようにして、そうしてやっと『居場所』を手に入れたのに、苦労してストレス溜めてまで、やっと手に入れたのに、あんな得体の知れないやつに、それを奪われつつある。 いや、もう、奪われてしまっている… これから私はどうしたらいいのか。 揚羽さえ現れなければ、いなければ、こんな事にならなかったのに。 私は揚羽が嫌い。私が閉じ込めた嫌な部分の塊だから。私が封じ込めた真実の私だから。 そして、そんな揚羽が皆に受け入れられて『居場所』を得ているから。 私はさらに大きく息を吐いた。 ふと、床の自分の影に目を落とすと、影が揺らぎ、そこから揚羽が頭を出した。 「きゃ………」 悲鳴を上げようとすると、揚羽の手が伸びてきて、私の口を塞いだ。 やっぱりこいつは化け物だ!人間がこんな事出来るわけがない。 「私は元々、あなたの中から出てきたのよ?私は常にあなたと共にある。そんなに驚かないで欲しいわ」 私の口から手を離し、揚羽は私の膝の上に頬杖をついて、おどけた表情を浮かべた。 「訳の分からない事を言うのはやめて!私はあなたが嫌いよ!私の前から消えてよ!そして私の『居場所』返してよ」 「私が嫌い?それはなぜ?理由を教えて?」 私が揚羽を嫌いな理由…それは私が『居場所』を得る為に、捨てたはずの自分だから。 「私があなたを嫌いな理由、それはあなたが私と正反対だから。それなのに、私から『居場所』を奪ったから」 私が答えると、揚羽は両手を伸ばして、私の顔を掴んだ。 「正反対は受け入れられない?私はあなた、あなたは私。分からない?よく考えて?まだ時間はあるわ」 揚羽はうっすらと笑みを浮かべていて、まるで私を試すような口調だったけど、それはいつもよりどこか優しさも感じるものだった。 「揚羽、あなたは私に何をさせたいの?私をどうしたいの?」 私のその質問には答えずに、揚羽は少しだけ柔らかな笑みを見せて、私の影の中へと姿を消した。 私はあなた、あなたは私 揚羽は、私の中の捨てたい私そのものなのだろうか。 もしそうならば、私は揚羽を消し去りたい。 自分の中の嫌いで要らない自分を 消し去ってしまいたい。
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