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私はベッドに座り、大きなため息をついた。
私にはこの小さな自分の部屋しか、心休まる場所がなかった。
私は再びため息をつき、頭を抱えて項垂れた。
今まで、私が私を押さえ込んで、自分で嫌だと思う部分も出さないようにして、そうしてやっと『居場所』を手に入れたのに、苦労してストレス溜めてまで、やっと手に入れたのに、あんな得体の知れないやつに、それを奪われつつある。
いや、もう、奪われてしまっている…
これから私はどうしたらいいのか。
揚羽さえ現れなければ、いなければ、こんな事にならなかったのに。
私は揚羽が嫌い。私が閉じ込めた嫌な部分の塊だから。私が封じ込めた真実の私だから。
そして、そんな揚羽が皆に受け入れられて『居場所』を得ているから。
私はさらに大きく息を吐いた。
ふと、床の自分の影に目を落とすと、影が揺らぎ、そこから揚羽が頭を出した。
「きゃ………」
悲鳴を上げようとすると、揚羽の手が伸びてきて、私の口を塞いだ。
やっぱりこいつは化け物だ!人間がこんな事出来るわけがない。
「私は元々、あなたの中から出てきたのよ?私は常にあなたと共にある。そんなに驚かないで欲しいわ」
私の口から手を離し、揚羽は私の膝の上に頬杖をついて、おどけた表情を浮かべた。
「訳の分からない事を言うのはやめて!私はあなたが嫌いよ!私の前から消えてよ!そして私の『居場所』返してよ」
「私が嫌い?それはなぜ?理由を教えて?」
私が揚羽を嫌いな理由…それは私が『居場所』を得る為に、捨てたはずの自分だから。
「私があなたを嫌いな理由、それはあなたが私と正反対だから。それなのに、私から『居場所』を奪ったから」
私が答えると、揚羽は両手を伸ばして、私の顔を掴んだ。
「正反対は受け入れられない?私はあなた、あなたは私。分からない?よく考えて?まだ時間はあるわ」
揚羽はうっすらと笑みを浮かべていて、まるで私を試すような口調だったけど、それはいつもよりどこか優しさも感じるものだった。
「揚羽、あなたは私に何をさせたいの?私をどうしたいの?」
私のその質問には答えずに、揚羽は少しだけ柔らかな笑みを見せて、私の影の中へと姿を消した。
私はあなた、あなたは私
揚羽は、私の中の捨てたい私そのものなのだろうか。
もしそうならば、私は揚羽を消し去りたい。
自分の中の嫌いで要らない自分を
消し去ってしまいたい。
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