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2 揚羽の真実
私があなたから羽化してから起きた事は
現実のようで、現実ではなくて…
あなたが心の奥深く、何重にも鍵を掛けて封じ込めた、不必要で嫌悪すらするもう一人の存在の私。
私があなたから羽化したのは
あなたには私も必要なのだと、私も含めてあなたなのだと、そう思い出させるため。
だから、あなたが否定され、私が肯定される残酷な現実を見せる。
そう、これは私が見せる悪夢
あなたは、私が自分が封じ込めた忌々しい存在だから、私を嫌うのは当然。
だけど
私には、あなたを嫌う理由なんかない。
あなたには私も必要で、私にもあなたが必要。
最後には、私も必要だと分かってくれると信じていたけど、やっぱりあなたも他の人と同じだったのね…
私はもう『揚羽』ではない
だけど『委員長』としか呼ばれなかった、あなたでもない
私は
『一条 咲雪』
ちゃんと名前で呼ばれる一人の人間になった。
私たち、二人でこの存在だったのに
ああ
とても残念……残念よ…
私は
ニィっと
顔が緩んでしまうのを、必死にこらえた。
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