何がいい?

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何がいい?

気持ちよすぎ。私はまた動けなくなってしまった。 「今日も新しいイキ方、覚えたな」 先生は、荒い呼吸でぐったりしている私を見て、ご満悦のようだった。 「もう……」 人がイクのを見て喜ぶなんて趣味が悪い。 「ところで、来週は日曜日だけ会えるんだったよな?」 「はい」 先生に抱かれているせいか私の頭はまだ余韻に浸っていたけど、先生の頭は来週に向けて、切り替わっているらしい。 「いつも俺が好きなことやってるからさ、次は心春がやりたいことをしよう。何がいい?」 先生がじっと私を見つめる。こうしてみると、やっぱり目鼻顔立ちの整った美青年だ。どきどきしてしまう。 「え? でも、絵は……?」 今週はのんびりとしたから、来週はがっつり絵を描くつもりなのかと思っていた。 「この近場ならどこかに遊びに行ってからでも描けるだろ?遠慮するな」 遠慮するなと言われても、今すぐには思いつかない。 「う~ん……」 「なんでもいいぞ」 大好きな先生と一緒にやりたいこと……私は悩んだ挙げ句に、 「……お洒落な雰囲気のお店で一緒にご飯食べたいです」 と答えた。先生と一緒にゆっくりおいしいものを味わいたいなと思ったからだ。先生の反応は……というと、 「ん?それでいいのか?」 なんだか拍子抜けしている。でも、 「はい」 私の心は変わらない。 「わかった。じゃあ、ここなんてどうだ?」 私の本気を感じたのか、先生はスマホを操作して、候補のレストランの写真を見せてくれた。 「わあ……イメージ、ぴったりです」 見た目は日本の古民家で趣があり、中は吹き抜けで開放感がある。値段も休日のランチにしては、お手頃な1500円だ。写真にはかわいらしい前菜をはじめ美味しそうな料理が並んでいた。場所も先生のアトリエより10分くらい上のところだ。先生は、羨望の眼差しを向けている私を見て、調子に乗ったのか、 「気に入ってもらえてよかった。ここのレストラン、世界で修行してきたシェフたちが立ち上げたすごく人気なんだ。その中の1人が俺の幼なじみだから、融通をきかせてもらえるぞ」 と自慢げに語り始めた。 「先生、顔が広いですね」 さすが。高校時代の私が好きになるくらい社交的なだけある。 「だろ? 俺の特権を駆使して、予約しとくよ」 先生はそう言うと、私の唇に軽く口づけをしてくれた。感謝の気持ちを込めて、私も口づけを返す。何気ない穏やかな時間は、何物にも変えられないなと思う。
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