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丘の上のレストラン
古民家風のレストランに入ると、
「いらっしゃいませ」
私よりも若そうな男性スタッフが出迎えてくれた。笑顔が太陽のようにまぶしい青年だ。いや、まだあどけない感じもするから、少年というべきだろうか。
「予約していた深山です」
「オーナーから聞いております。お靴はそちらで脱がれてから、お上がりください」
男性スタッフに言われるままに靴を脱ぎ、廊下をどんどん奥へと進む。1つ1つの部屋がふすまで区切られているせいか他の客には全然会わなかった。
「立派なレストランですね」
昔ながらの日本家屋だからか畳の香りもする。レストランというか高級料亭みたいな雰囲気だ。こんなところに来ることなんて、めったにないからついはしゃいでしまう。先生は、
「よかった。喜んでもらえて」
そんな私を見て、幸せそうに微笑んでいた。
突き当りまで進むと、男性スタッフがふすまの前で止まり、
「こちらの部屋です」
と言って、丁寧にゆっくりと開けた。すると、
「わあ……!!」
私たちが住んでいる街がミニチュアの模型のように見える世界が広がっていた。遠くには海まで見える。狭い田舎町だとぶつくさ文句ばかり言ってしまうけど、こうしてみると、意外と広いような気がする。
「いい眺めだな」
先生が窓に張り付いている私の隣に来て、一緒に張り付く。いくら眺めていても飽きないから不思議だ。
「当レストランでも1番の眺めの部屋だからね」
私たちがヤモリのように張り付いていた時、後ろからかわいらしい声がした。振り向くと、白っぽい服装をした茶髪のショートボブの女性がいつの間にか立っている。
「みのり!!いつからそこにいたんだよ」
先生がしれっと男性スタッフと入れ替わっていた女性に辟易する。あれ?今、名前で呼んでいたような……。
「あら。シェフ自ら挨拶に来てあげたんだから、もっと歓迎してくれてもいいんじゃない?」
シェフ……?
まさか、この華麗な女性が……
先生の幼なじみ……!?
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