2195人が本棚に入れています
本棚に追加
恋バナ
お酒が進むにつれて、女子たちは恋バナを始めた。私は全く興味がないのだけど、先生は男子たちの中心にいて、話しかけられそうにない。いったい何をしに来たのやら。
「なんか一ノ瀬さんって雰囲気変わったよね」
急に話しかけられてはっと我に返る。化粧が濃くて、名前と顔が一致しない目の前の女子は誰だろう。彼女の声がでかいものだから、さっきまで騒いでいた男子たちまで注目している。もちろん先生もこちらを見ている。
「そうそう。びっくりしちゃった」
化粧の濃い女の隣で、友達らしい茶髪の女が続ける。それはこっちのセリフだ。
「大人っぽくなったよね」
ショートボブの女がきんきんとした声で私をほめる。この女は確かクラスのマドンナだったはずだけど、あまり面影がない。
「そ、そうかな……?」
みんなに見られて、再び顔が火照る。お酒のせいってことにしておこう。
「彼氏できたの?」
どうやら私は女性陣の酒のつまみになっているらしい。恥ずかしいにもほどがある。
「ううん。付き合ったことって、いまだになくて……」
こんなことまで先生の前でさらけ出さないといけないなんて……。
「へえ。じゃあ、今度、うちの会社の男、紹介してあげるね」
さすが。クラスのマドンナだった女は顔が広い。そんなお節介、いりませんけど。
「ありがとう」
とは言えないので、とりあえず、善意だけはありがたくいただいておくことにした。今の一連の会話を先生はどう思ったのだろう。…っていうか、先生、彼女いるのかな。私はそれだけが気がかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!