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5年前
高校時代、根暗でガリ勉だった私は、もちろん恋にも無縁だった。私は5年前、国立大学を目指して勉強するまじめな高校生だったのだ。だから、高校3年生の時、担任になった先生に対して、正直、いい印象は持てなかった。私にとっては、世界が違いすぎる人だと思った。
「担任の深山(みやま)ひなたです。担当教科は美術。よろしくお願いします!!」
周りの女子たちは爽やかイケメン新任教師に浮足立っていたみたいだった。でも、私には空気を読めずにおとぎ話から県内有数の進学校に出てきてしまった白馬の王子様のようにしか思えなかったのだ。
「先生。美術って感じじゃないよ。体育教師の方が向いているんじゃない?」
自分と年が近いと知るやいなや、クラスメイトたちが先生たちをからかい始める。確かに。女子たちがうっとりしてしまうようなむきむきの上腕二頭筋は、どう見ても美術教師の腕とは思えない。
「そう言うなよ。俺はこう見えて、美術一筋なんだ。美術部の顧問になるから、美術部のやつはよろしくな」
それを聞いて、私はぞっとした。私の唯一の安らぎの場所である放課後の美術室がこんな大雑把そうなハイテンション教師に侵食されるなど断じて許されない。そう思ったからである。
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