恋バナ

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恋バナ

 お酒が進むにつれて、女子たちは恋バナを始めた。私は全く興味がないのだけど、先生は男子たちの中心にいて、話しかけられそうにない。いったい何をしに来たのやら。 「なんか一ノ瀬さんって雰囲気変わったよね」  急に話しかけられてはっと我に返る。化粧が濃くて、名前と顔が一致しない目の前の女子は誰だろう。彼女の声がでかいものだから、さっきまで騒いでいた男子たちまで注目している。もちろん先生もこちらを見ている。 「そうそう。びっくりしちゃった」  化粧の濃い女の隣で、友達らしい茶髪の女が続ける。それはこっちのセリフだ。 「大人っぽくなったよね」  ショートボブの女がきんきんとした声で私をほめる。この女は確かクラスのマドンナだったはずだけど、あまり面影がない。 「そ、そうかな……?」  みんなに見られて、再び顔が火照る。お酒のせいってことにしておこう。 「彼氏できたの?」  どうやら私は女性陣の酒のつまみになっているらしい。恥ずかしいにもほどがある。 「ううん。付き合ったことって、いまだになくて……」  こんなことまで先生の前でさらけ出さないといけないなんて……。 「へえ。じゃあ、今度、うちの会社の男、紹介してあげるね」  さすが。クラスのマドンナだった女は顔が広い。そんなお節介、いりませんけど。 「ありがとう」  とは言えないので、とりあえず、善意だけはありがたくいただいておくことにした。今の一連の会話を先生はどう思ったのだろう。…っていうか、先生、彼女いるのかな。私はそれだけが気がかりだった。
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