すーちゃんの研究室

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 さぁ、良いタイミングでコーヒーが落ちきったぞ。本当にブラックで良いのかい?  そうか…オススメなんだがなぁ、すーちゃんスペシャル。もしかしてダイエットでもしているのか?自らの外見を気にする事も大事だが、適度な糖分は頭の働きもよくするのだからエネルギー不足にはならないように気をつけたまえ。…ふむ、やはりうまいな。  しかしなんというか、標準体型から大きく外れているようには見えないし、君のどこにダイエットの必要があるのか理解出来ないな。  水着?ふむ、夏休みに気になる相手を海へ誘うつもりなのか。それは頑張ってくれたまえ。そして誘えた暁には目一杯楽しんでくると良い。  む?ボクの夏休みの予定かい?君と違ってボクはアウトドアに興味がないからね、期間中もここで研究に没頭しているだろうよ。  ふむ、随分と面白い顔をしているね。引き篭ることがそんなに信じられないかい?  せっかくの長期休暇なのにと君は言うけどね、ボクとしては炎天下のなかをわざわざ人混みに飛び込むだなんて疲れるだけの行動に意味を見出だせないのだよ。  それなら興味があるものを教えろ?ボクのかい?そんなものを知ったところで君が得することはないだろうに。  それが普通?普通の人間は他人の思考や志向や嗜好が気になるものなのか?プライバシー保護を訴えるくせにSNSで個人情報を晒す事は厭わない人間の考えそうなことだ。理解に苦しむよ。  とはいえ今日の質問は至極単純だったからね。君がそこまで強く関心を持つのならばボクとしても答えてあげたいところだが、困ったことにボク自身、研究以外だと何に興味を持つのか把握していなくてね。  ふむ。しかし、敢えて挙げるのであれば君への興味はあるのだろうね。好きか嫌いかで言えば嫌いの側に傾いているけれど、そうでなければこんな風にコーヒーを提供することはないし、そもそも会話すら受け付けないだろうから。  嫌いな相手とは普通好き好んで会話をしない?ふむ、普通と称される事は滅多にないのだけれど、君はボクを普通の人間にカテゴライズしてくれやがるのかい?  ふふん、なんてな。冗談だ。君がボクを普通だと思っていない事は分かっているさ。そうでなければ、こうしてこの教室に通うこともないだろうからね。  君の何が嫌いか?ふむ、臆することなく尋ねられる所は君の長所なのだろうけれど、それは人の研究時間を削っている自覚もなく尋ねているのかい?  ふふん、そんなに怯えなくても良いさ。お偉方には随分と期待をされているようだが、ボクのこれは趣味だからね。自分のやりたいときにやりたいことをやるだけさ。ただし没頭する質のようだから、君の訪問に気がつかない時は勘弁してくれよ。  あぁ、そういえば既に一度あったようだね。あの時はいつの間にかケーキ箱が置いてあったから驚いたものだが、しかしちょうど糖分が切れたところでね、助かったよ。甘さ控えめで美味しいシフォンケーキだった。  ふむ、ユーマでも見ているような顔をしているね。どうかしたかい?何でもない?それなら良いが、フラストレーションを溜め込むのは身体に良くないぞ。あとこの例えはボクが気に入らないから忘れてくれ。ユーマなどと、不確かな存在がボクは嫌いなんだ。  さて、質問はユーマではなく君の何が嫌いか、だったね。挙げればキリがないんだが、全部聞いてみるかい?  精神衛生上の理由により代表でひとつ?ふむ、なかなか厳出が難しいところだが、そうだな。人間への興味を再び抱かせたことだろうか。  そんなこと?ふむ、君はそう言うけどね、おかげで研究対象が増えて困っているんだ。今日から新たに女教師の秘密も探らなくてはならなくなったし、君はボクの興味が薄れるまで責任持って情報収集に勤しんでくれたまえ。  夏休みに遊ぶ時間があるのかって?君のかい?ふむ、それはボクの知ったことではないな。なにせボクは君が嫌いなんだからね。せいぜいこの部屋でボクの研究の手伝いでもしていれば良いよ。  ふむ、どうかしたのかい?またおかしな顔をしているね。まるで惚れている相手と共に過ごす夏休みを想像してにやけているみたいだよ。  おや、驚いた。当たってしまったのか。これは失礼したね。せっかく良い例えが浮かんだと思ったんだが、正解を引き当ててしまっては例えにならない。  む、今のは告白も兼ねているのか。それならボクも答えを返さなければならないのだろうが、しかし君も思いきったことをするね。ボクは繰り返し君が嫌いだと口にしていたのに、恐れはしなかったのかい?それともダメで元々の玉砕覚悟なのかな?  ふむ、確かにさっき、嫌よ嫌よも好きの内だと言ったのはボクだね。それにボクが君に興味を持っていることも事実だ。嫌いの反対が無関心なら、無関心の反対である好きに通じる。今日のボクの回答についてその解釈は正しいよ。  ふむ、これはどうも一本取られてしまったようだ。そのどや顔は腹立たしいが、だけれどそれならば、君の告白に対するボクの回答は、ボクは君に軒並みならぬ関心を抱いている、になるのだろうね。  それだとどちらか分からない?どちらも何も、ボクは何度も君が嫌いだと言っているんだけどね。諦めが悪いのか都合の良い言葉しか耳に入ってこないのか、つくづく面白い研究対象だよ、君は。  ふむ、そんな君にひとつ提案だ。今唐突に思い浮かんだのだけれど、普通の人間がフラれた相手からの誘いにどう答えるものか興味があってね。  もしよければ、ボクと一緒に砂鉄の多い砂浜に足を取られながら人混みを泳ぎに行かないかい?
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