船を流す

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お盆の最終日に海や川に舟を流す風習は、日本各地にある。 私のストレッチのクラスでも、85歳の生徒さんが、故郷の茨城、利根川付近で、牡丹餅やうどんやご飯など、盆棚に供えたものを蓮の葉に包んで何かで作った船に乗せ、川に流すのだという。船は何で作るんですか?と興味を持って尋ねたが、さあ、と答えた。 そう言えば、インドでは墓を作る習慣はなく、死者はガンジス河の岸辺で灰にして流す。そうすれば何かに生まれ変わると信じられている。 生きているモノと死んだモノが「流す」いう行為で繋がるというのは、もしかしたらアジア特有ではあるまいか。遺体を出来るだけもとの形のまま石の棺に入れ、できれば永遠に残しておきたい西洋には、あり得ない考えのような気がする。 はて、私もいつか、あの世行きの舟を川に流してみたい。 優しかったあの人や、不器用だけど一生懸命生きたあの人に 手紙や好物を届けたい。 小さい頃、親戚の大きなお家の立派な庭で 玉砂利の光る鑓水に、ささ舟を流して遊んだ、あの日みたいに。(完)
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