船を流す

1/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
東京のお盆は7月にするのが一般的なので、今日(7月17日)辺りは住宅街の門に、送り火を焚いた後の「おがら」の燃えかすが残り、きゅうりの馬、茄子の牛がその脇に佇んでいたりする。 特に私の住んでる区は、昭和30年代までは農村だったので、注意して見ると、昔ながらの風習が断片的に残っている。 茄子の牛の背中には、仏さまがあの世にお土産に持って帰るらしい、何か葉っぱでこしらえた可愛い振り分け荷物が背負わされていたりする。 そんなもの、子供のころ住んでいた渋谷区千駄ヶ谷では見たことが無い。 生家は、旧家でも何でもないけど、何を置いても、お寺、お墓の行事に一家総出でマイシンする家だった。そのせいなのか、私は子供のころから、仏壇から漂う鳩居堂の好文木(こうぶんぼく)の香りに慣れ親しみ、お墓参りが大好き、という変わった子供だった。 毎朝、仏壇のお水を取り換え、過去帳をめくるが、母が忙しくてその役目を言い付けられると、子供の私はイソイソとしてやっていた。 そして未だにそういうモノコトが嫌いじゃない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!