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エピローグ
ふと思い出したので、和人は帰りの電車の中で、友人に例の事件のことをメールで聞いてみた。もちろん、友人の部屋が『厄部屋』であったことは伝えなかった。
最寄り駅に着く前に、返信が帰ってきた。そのときに起きた事件は、俺とその友人の間では、『エロ本全滅事件』と呼んでいたのだという。そのフレーズを目にして、和人の記憶も蘇ってきた。
あのとき二人は一緒に、友人の持っていたエロ本を読み漁っていた。若くて可愛らしい女性の、豊満な身体を写した写真を見て、二人は馬鹿みたいに喜んでいたのだった。
その時、友人の母がノックもなしに部屋に入って来てしまったのだ。数々のエロ本が散乱している部屋に。
友人の返信は『だからって全部捨てちまうことなかったのにな(笑)』で締めくくられていた。我ながら阿呆なことをしていたと思った。
思い出を振り返り終わった和人は、最寄り駅に近づくに連れ、あの部屋のことを考えていた。『厄部屋』は何かに影響を及ぼしていたのだろうか……。
気がつくと、電車の扉は開いていた。景色を見るに、最寄り駅に到着したようだった。和人は慌てて電車を下りた。
ゆっくりと動き出す電車を見送ると、和人は再び考察を再開する。あの『エロ本全滅事件』が『厄』によるものだとしたら、和人の『厄部屋』のイメージは覆る。
てっきり『厄部屋』というのは、そこの住民がこぞって自殺したとか、そこで何度も事故が起きたとか、そういうオカルトチックなものだと思っていた。
もしそういうものではなく、ちょっと嫌なことがあるくらいの話だとしたら、あの異常な暑さと謎の音は……。
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