抒情嘆

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 俺は広間にいる。広間の倒れた椅子に座っている。上等なやつだ。――当たり前だ。俺がプレゼントしたんだから。オレンジのクッションから、黄色いスポンジが飛び出ている。――当たり前だ。俺が必死に貯めて買ったんだから。    嗚呼、美味しい。やはり練乳にかぎる。この白に白を掛けるのがいい。    嗚呼、美味しい。やはりチリソースにかぎる。この垢に赤を掛けるのがいい。    さっきからクマちゃんの人形が、こっちを見ている。白に水玉の入ったベッドから、こっちを覗いている。――「何だ。」 「ご主人様は?」 「ご主人様? ああ、あれか。(あれ)のことか。」 「ねえ、ご主人様はどこにいっちゃたの。」 「ほら、そこに座ているじゃなか。――ああ、そうか。お前歩けねぇのか。じゃあ、俺が連れてってやる。」 「わーい。わーい。――あ、ご主人様だ。わーい。わーい。」    嬉しそうだ。実に嬉しそうだ。そりゃそうだ。嬉しくなきゃいけねえ。そうでなきゃいけねえ。
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