十五皿目 正論論破愛情論

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 俺がゼオ様といると幸せだから、俺に興味がない彼につきまとっている。  ゼオ様は俺が諦めるでも想い続けるでも、どちらでもいいと言っていた。  それは迷惑だけれど、嫌いではないということ。現段階では恋愛的に俺が好きではないから、思いっきりお断りしてくれるのだ。  けれどもし──無関心が嫌悪に変わったら? 「…………」  見るだけで不快だからどこかへ行ってしまえと言われて、俺に背を向けて歩いて行ってしまうとしたら?  いつも俺を応援してくれているシャル様やタロー様が「ゼオを不幸にするな、諦めないとだめだ」と嗜める。  俺を信頼して副官にしてくれた魔王様が「酷いことをするお前に副官は任せられない」と言って俺を睨み、ガド長官が「自分の気持ちを追いかけてないでいい加減しゃんとしろよ」と言う。  そんなことがあったとしたら? 「……うん、それは困ったことですね……」 「うん、困ったことだよ……ばいばい、さみしいからやだな。ぐすん」  ボソリと心のままに呟くと、それを聞いたタロー様がシャル様のパペットで魔王様のパペットの頭をなでた。  まるで、自分のことのようだ。  そんなことありえないのに──この魔王城から去ってしまいそうな、か弱い声。  植物の芽が生えたクリーミィブロンドの彼女は、花のようにやわらかで、一瞬の盛りを終えた後は枯れていくのだろうかと思う。 「タロー様。片割れの想いを抱いて生きるおバカなニャンニャンの言葉を、どうぞニコニコと笑ってお聞きくださいね?」 「う」  さみしげなその小さな少女の姿に、俺は魔王様のパペットを動かし、シャル様のパペットをぎゅっと抱きしめた。  そう。ぎゅっと抱きしめて。  彼らがいない間は俺が世話係だから、この人形くらいの温かさを分けてあげられるように。 「そうだなぁ……もしゼオ様といることで彼が不幸を感じるなら、それを幸福に変えるために、やっぱりそばにいるんだ。俺といる限り、愛されない不幸を感じることはないんだから」  パペット同士を抱き合わせながら、ゆっくりと語る。  俺の声は、自分でも笑ってしまうくらい幸せに満ちていた。 「俺がゼオ様を想うことで他の人から見てゼオ様が不幸に見えるのなら、俺はやっぱりそれを幸福に変えてみせる。諦めるという選択肢はないのさ。そんなもの、もう捨てた」  なにもつけていないほうの手でそっとタロー様を抱き寄せ、パペットと本体を、両方抱き寄せる。 「だから、他なんて見えないんだというほどゼオ様に心底愛する人ができてしまうまで、……いいや、できてもきっと諦められないけれど……うん」 「…………」 「俺はずっとゼオ様が好き。ずっと一緒にいたいな。そうあれるように、努力します。泣いても丸くなっても、それでも立ち上がって愛していると笑います。それが片想いにゃんこの愛し方。……ちょっと恥ずかしい。かっこうつけました。へへへ……」  体を離して照れ笑いすると、タロー様は迷子のような目で俺を見つめ返した。  自分の望みと世界の望みを天秤にかけて、どちらを優先すべきか悩んでいるんだろうか。
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