十五皿目 正論論破愛情論

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「にゃんちゃん泣かないでー? 私、いいこいいこするよ?」 「優しい幼女優しいっ! ぐすん……そ、そりゃあ俺は長い間恋心を言わずにいましたともっ! 緊張モードになってしまい、思ってもない罵詈雑言を吐いてしまいましたともっ!」 「むー? ばりぞーごん!」 「あうっ……ひ、酷い言葉です。で、でも、でも男を好きではないゼオ様に気持ちを伝えると、今の関係まで崩れてしまうような気がして……! うぅ、臆病な過去の俺めっ、俺めっ!」  おーおいおい、と泣きながら、ポカポカと自分を軽く打つ。本当のことだ。  ゼオ様やガド様は言葉より行動を見る人なので俺が暴言を吐いても傷つかないけれど、メンタル弱者ならぺしゃんこだと思う。  弱いことは魔界では罪だが、俺は軍魔。弱いものを守るのが仕事である。傷つけていいわけがない。 「よしよし。にゃんにゃんよしよし。だいじょぶだぞー? かなしいことは、しゃるがモグモグしてくれるよ!」  タロー様はにこにこと笑いながら、俺の手にある魔王様のパペットをシャル様のパペットでよしよしとなでてくれた。  丸くなってしくしくと泣き言を漏らす。  ちなみにこれ、タロー様は慣れている。  なぜなら俺はシャル様に泣きつき、シャル様がいない今はタロー様に泣きつき、それなりの頻度でこの状態になっているからだ。  最近タロー様は俺の泣き言を聞きながら、シャル様の真似をしてなでてくれるようになった。  きっと二人は、魔族のメンタルが豆腐だということを知っていて神様が派遣してくれた、癒し製造機なんだ。間違いない。 「うっうぅ……わかってはいるんです……。今の俺は迷惑でしょうね、ゼオ様にとっても。だけど諦められない。だって、ゼオ様と一緒にいたいんです、俺」  しばし情けなく丸くなっていた俺は、癒しの力で復活し、目元を擦って唇を尖らせた。  するとピタッ、とタロー様の手が止まる。真ん丸な愛らしい目を上目遣いにして、不安そうに小首を傾げた。 「……いっしょ?」 「? はい。俺は、ゼオ様に迷惑だとわかっていても諦められず、一緒にいたいがために付きまとっています。……本当は嘘でも、ふっきれたと言うべきなんですけれどね……えへへ」  魔王様パペットの手の部分で頬をかく。  タロー様は俺の答えに納得したのか、コクリと頷いた。 「うん、そだねぇ。めーわく、わかっても、いっしょにいたいの。ぎゅーって、したくなるもんね。好きな気持ち……えっと、あったかいぽかぽか! いいねって知ったら、さむいのもうやだね」 「はい! 他の人にバカだと言われても、ゼオ様に見合っていないと言われても、俺は絶対に諦めませんよ。初めて告白した日に出した結論は、覆らないのです!」 「ほあぁ……にゃんにゃんつおい! かっこいいね~!」 「えへへへへ……!」  思うままを答えるとポフポフと拍手して讃えられる。  讃えられるようなことを言っていないけれど、されると照れくさい。 「……で、でも、あのね? あのね……っにゃんにゃんがばいばいしたら、ぜおさまうれしいって、みんなも言ったとしたらね? にゃんにゃん、どうしよう……?」 「えぇっ!? う、うーん……」  けれど拍手をやめたタロー様は、シャル様のパペットで魔王様のパペットをつつき、きゅっと二人の手を握らせた。  突然のネガティブな疑問は俺の心をツンツンとつつく。  驚いたけれど、鮮明に思い描くと、俺の表情は曇った。
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