十五皿目 正論論破愛情論

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「おかしなことなど王は仰っておりません。この異世界人どもは、不法侵入者です。世界にすら勝手に踏み込んできたくせに、我々の城にまで土足で上がりこまないでいただきたい」 「さて、ふざけているのはどっちでしょうねェ。恋愛信仰盲目様もかまちょヘラビッチ様も、我々は召喚された異世界人なのですよォ。この意味がおわかりいただけやがりますかね?」  リューオ、いけない。  隠しきれないセファーへの殺意でボロが出かけているぞ。  けれどそう言われたセファーは閉口し、舌打ちをする。頭がいいからこそ、リューオの言葉が正論であると理解しているのだろう。  彼はきっと理屈ではなく、感情で俺達を否定しているのだ。  リューオの言葉を受け、俺は困惑するアマダに視線を戻し、わざと怒りを燃やして睨みつける。 「そう。その通りだ。アマダ……お前は自分でアゼルに『魔王とその家族を城へ招待する』と言ったんじゃないか? 自分で言っておいて、俺たちはいつになっても招待されやしねぇのはどういうことだ。いざ来たら不法侵入とは、どういうことだ」 「そ、それは俺にも事情があって、……っそんなつもりなかった。だからちゃんと挨拶に行っただろ……?」 「挨拶? 宣戦布告の間違いじゃないのか?」  そう言うと、途端に表情が戸惑いから悲愴に変化する。言いすぎてしまったかと思わせるようなそれに、負けてはならない。 「シャル、酷い……っ俺だって、悪いとは思ってっ」 「黙れッ!」 「ッ」 「言い訳は聞かない。お前の行動、表情、言葉、全てが俺は芯のない上っ面に思える」  声を荒らげればアマダはビクリと震え、隣に立つアゼルの少し後ろに下がり、腕を絡めたまま縋るようにアゼルを見つめた。  俺の胸がズキズキッ、と痛むが、アゼルはその手を振りほどかない。  痛ましそうに眉を寄せてアマダに視線を返し、まるで味方のように振る舞う。  ……わかっていても、少し妬く。いや、結構妬く。むむ、演技に身が入るな。ヤキモチがこんがり焼き上がる。  セファーの動きはリューオが止めてくれているので、アゼルが動かない限りずっと俺のターンだ。  離れの戦いセカンドステージ。  甘やかされていたアマダにお説教をして揺さぶるのは、兄であるガルからの頼みでもある。友人の頼みは叶えたい。 「悪いと思っているなら離れろ。恋敵である俺を嫌っているくせに、俺に嫌われないよう詭弁を吐くのはやめろ」 「お、俺はそんなことっ! 思っていない! 嫌いだなんて、そんな……っ」  憎しみを込めた声を上げる俺は、テーブルから立ち上がった。  そして否定するアマダにズイと近寄って、真っ向から言及する。 「誰よりも誰にでも好かれたいなら、お前が好きなのは自分だ」 「!」 「お前の愛情は、自分専用だろうが。さっさとアゼルを返せ。でないと俺たちは帰らねぇぞ」 「──シャル、帰れ」 「っ」  罪悪感を堪えつつ思いっきりアマダに楔を打ち込み終わった時、ようやくアゼルが動いた。  アマダの肩を抱いたまま、いつもとは違う低い声で、迎えに来た俺を突き放す。
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