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枕だって蔑まれようが、仕方ないじゃないか。お前らには分からない。
業界全体に影響力を持つ人間の誘いを断ったら後でどんな目に合うか。タチの悪い奴に当たった場合は直接仕事に、事務所に、メンバー全員に響くんだ。下手したら俺のせいでグループの存続が危うくなる。
グループの一員として貢献してる自覚はある。グッズの売り上げや自分宛のファンレターは目に見える指標だ。しかしそれがまた悠吾の怒りを買う。見られてなんぼの商売なんだから、そこは割り切ってもらわないと仕方ないけど。
初めて会った頃は誰よりも世話を焼いてくれて、右も左も分からない自分を気にかけてくれた。
悠吾は誰よりも歌や振り付けを覚えるのが早く、抜きん出た表現力で他のプロダクションからオファーがくることも多い。なのに現状で満足しない。とことんまで自分を追い詰め、地道に努力する。そんな彼を俺はひそかに尊敬していた。
人種が違う。栴檀双葉と大器晩成の違いみたいな、成長スピードの問題だと思っていた。当然ながら得意とするジャンルも違う。人間なら誰しもどこかが突出して、どこかが窪んでいる。嫉妬なんて、ハナから間違った考え方だ。……なんて諭したところで彼は納得しないだろうけど。また、「できる奴の高慢な説法」だとか思って終わりだろ。
グループの為に行動している……それは本当だ。俺も、彼も。自分だけがのし上がろうとしているのではなく、常にメンバーの事を考えているんだ。
だから辛くても苦しくても差し出される手をとった。触れた瞬間身体中を侵されるような毒を感じても、入ったばかりの俺のせいで周りに迷惑をかけないように。
それを悠吾は知らない。知って欲しいとも思わない。どっちにしても彼からしたら歯痒い話だから。自分が誘われなければ魅力が無いと悲嘆するし、俺が誘いを断ればプロ意識がどうとか、グループでやってる意味がどうとか、何かしらの文句を述べただろう。
「……ふーん。じゃあこの穴、俺が初めてってことか。それは悪くない。……かも」
悠吾の性器は萎える気配がない。そのまま影が広がって、体重がかかる。後ろに衝撃が走った。
「あぁああぁぁっ!」
硬い凶器で中を抉られた、という表現がぴったりだ。容赦なく俺の中に潜り込んで蹂躙する。熱と質量を持った肉棒が内側からドロドロに溶かしてくる。
「キッツ……ッ、お前の中狭すぎてもげそう」
冗談なのか本気なのか分からないが、どちらにせよ反応することは出来なかった。呼吸が荒くなって手足をばたつかせていると無理やり押さえ込まれ、開いた口を彼の唇で塞がれる。思ったより柔らかくて、キスも上手かった。
「んん、んう……っ」
腰の動きはずっと止まっていた。しかし依然として繋がったまま、接吻だけが延々と続く。今はちんこよりずっと気持ちいいけど、果たしてこの行為に意味はあるのか。頭の隅っこで考えていた。
俺達は別に恋人でも友人でもない。テレビの中だけ、事務所の中だけ「仲間」なんて綺麗な言葉で形容しているけれど、本当は深いプロフィールもろくに知らない、赤の他人だ。
そんな奴と憎み合い、肌を重ねている。世間なんてよく知らないけど、少なくとも俺達は馬鹿な世界に生きてると思った。
「六夏。もう俺以外の奴に股開くなよ。お前を好き勝手していいのは俺だけだ」
悠吾は額に汗を浮かべながら口角を上げた。
本当に、どうしようもない勘違い野郎だ。俺が今まで誰の為に服を脱いでいたかも知らないで。
そう思ったら、何のために頑張っているのか分からなくなった。俺が守りたかったのは俺達のグループか、自分の立場か、それとも……
「なぁ。俺がいなくなったら、嬉しい?」
融けた思考が身体を汚す。六夏が虚ろな瞳で問うと、悠吾は鼻で笑った。
「わかりきったこと聞くなよ。嬉しいに決まってんだろ」
激しい律動が始まる。ベッドは壊れそうなほど軋み、耳障りな音を立てた。
「あっ、いやぁっ!悠吾、速い……っ!」
正常位で、悠吾は女性を抱く時と同じスピードで六夏の奥を突いた。女にできたらいいと思っていた。このまま突く度に彼の身体が変わったら面白い。胸が大きくなって陰茎がなくなって、精子を中に出したら何か孕めばいいのに。
そんな事で人ひとり手に入れた気になってる。……自分は本当に馬鹿だ。
「アイドルのお前なんて、死ねばいいのに」
ぼそっと呟いた。せめて違うグループで、違う業界で、違う場所で出逢えていたら。こんな無意味な嫉妬を繰り返していなかったかもしれない。
「一般人に戻って、ってのは無理だけどさ……っ。夜の、ベッドの中ぐらい全部忘れてもいいじゃん。邪魔なもん全部棄てて、お互い裸になって、気持ちいいとこ擦り合ってれば……大体のことはどうでもよくなるだろ」
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