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「ところが、そのとばっちりを食ったのは俺たち、新陳代謝のいい人間さ。
教主は"手が冷たいヤツは、心が温かい"なら、
その逆の"手の温かいヤツは、心が冷たい"に行き着いたんだ。」
大きいエイヒレを割かずに口へ運ぶ。噛みごたえのあるそれはちょっとしたストレス発散にもつながる。
「自分を持ち上げるのでなく、逆の評判を落としてやれ、ってね。
そうやって相対的に自らの地位を上げたのさ。」
居酒屋の親父はあまりに長い俺の話に、いささか呆れたような表情を見せていた。しかし、
「そうですねぇ。まあ今日はその辺にしておきましょうや。」
と言うと、不意に俺の耳に顔を寄せて続けた。
「あたりにそのナントカ教が聞いているかもしれませんぜ。」
その言葉にほろ酔いの俺はドキリとする。そして反射的に首を伸ばしてあたりを見回す。まるで俺は居酒屋のプレーリードッグだ。
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