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「あにさまが駄目と言ったから、だから、小夜は行かない。」
丸い紫紺の瞳に強い意志を浮かべて、彼女は言う。その瞳の色は暮れかけの空の色で、浮かぶ光は一番星。小夜という名に相応しい、夜の色の瞳が、鳴音の動きを封じる。
無邪気なその瞳に宿った強い意志は、あたり全てのものに、神に、妖に語りかける。守ってくれと、そう願う。
七つまでは神のうち。幼子を嫌いな神などいるべくもない。空に、光に、草に、土に、風に、木に、家に、宿る神の、妖の、その気配が現れる。
のらりくらりと言い逃れて少女を連れて行こうとした冥府の官吏は、初めてその瞳に緊張の色を滲ませた。彼女の力が、まさかこれ程のものとは。
「小夜、でも、君の兄サマが言っていることが正しいとは限らないよ?君の兄サマだって、間違える事はある。___いや、君は僕と行った方が幸せになれるのに、その幸せを邪魔しようとしているんだ。君の兄サマは、本当に君のためを思ってくれているのかい?」
少女はそれを聞いて少し首を傾げ、ふわりと微笑った。その瞳の意志は、微塵も揺らがない。
「小夜はあにさまを信じる事にしたから、信じて一緒にいるの。」
それにね、と言葉が継がれる。周囲の温度が一気に下がった気がした。
「小夜とあにさまは、ううん、小夜と華夜は、ずっと一緒に生きてきたから。だから、小夜は華夜を離してなんてあげない。」
⚠️⚠️⚠️次のページ、R15程度のグロ表現注意。苦手な方は避難をお願いします!!!⚠️⚠️⚠️
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