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「ああ、このペンネームね。時田の時には時子への思いが込められていて、田はエネルギー源としての田んぼのこと。春彦は私の母がつけてくれたんだ」
「えっ、お父さんのお母さんって、私にとってはおばあちゃんだよね!?」
「そうだよ。時子にとってのおばあちゃん」
「おばあちゃんがもう一人、増えるんだね。嬉しいな。もう一人のおばあちゃん、どんな人かな?そのうち会えるかな?」
「そうだなぁ。おばあちゃん、とても忙しい人だからね……」
「おばあちゃんは私のこと知ってる?」
「ああ、知ってるよ。もしかしたらいつか会いたいって思ってるかもしれない」
「じゃあ、きっといつか会えるね」
—その時、珠樹が時子を迎えに来た。
「退院のこと、話した?」
「うん。時子に連絡先も伝えておいたよ」
「そのうち、電話するからね」
「おっ、またそのうちな」
「まあ、仲が良くていいわね」
珠樹はふたりの様子を見つめながら、溢れ出すような感慨の思いで胸が一杯になった。そして、こうして再び圭と巡り会い、父娘の絆を取り戻せたことが時子にとって良い運命となりますようにと心底から願うとともに、可愛い娘を守っていくためにも母として看護師としてこれからもしっかり頑張ろうという決意で溢れ出すような波打つ鼓動に珠樹の胸は包まれていた—。
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